家を購入する前は幸せで離婚するなんて思ってもおらず、住宅ローンを組む際も「毎月頑張らなくっちゃ」と、前向きな悩みしかなかったなんて方も多いことでしょう。ですが、現実は厳しいものです。離婚から住宅ローン破産を招くケースもあることは事前に知っておかなければなりません。
ここでは、離婚と住宅ローン破産の関係や、それを回避する方法についてお伝えしていきます。
離婚で住宅ローン破産になる訳とは
離婚がキッカケとなって破産へと向かうケースは多々見られ、他人事ではありません。
では、なぜ破産になってしまうのか?具体的な原因をみていきましょう。
家賃が2倍
離婚後も売却せず、どちらかが住み続けるという場合、一方は異なる住まいを準備しなければなりません。
入居費や引越し代なども必要となり、経済的にはかなり苦しい状態です。さらに新居の家賃に加え、これまで通りの住宅ローンを支払う義務もあり生活が困窮してしまうという声も少なくありません。
また、これに加え、慰謝料や養育費の支払いなどを抱えるケースもみられ、火の車である家計を補うためにキャッシングに頼っているケースは特に危険です。
「なんとかなるでしょ」と、見切り発車してしまいがちですが、離婚の際に住宅を残す場合は、その後の生活費についてリアルに計算することが大切です。
オーバーローン
離婚時に売却し、お互いに新しい道を歩みたいと考える方は多いですが「オーバーローン」状態であれば難しいですね。
ここがネックとなって離婚したくても離婚できないケースもみられます。オーバーローンとは、住宅を売却しても住宅ローンが完済できない状況をいいます。
つまり家の価値が下がり、残債と釣り合いが取れていない状態です。
「土地は借金してでも買え」なんていわれますが、住宅の場合は経年劣化によってあっという間に価値が下がり、評価額が残債額を下回ってしまうことも珍しくありません。10年も経てば45%程度の価値しかなくなり、市場でも売れ残りやすい存在となってしまうのです。
さらに、この場合に売却を希望するなら、「残債-売却額=残りは一括返済」で残った債務を一括返済することが求められます。
なんとか貯金などで一括返済ができたとしても、小さな額ではないため、その後のちょっとしたつまずきで破産への道を歩む方もみられます。
責任感が希薄になる
どちらかが家を出ており、更に住宅ローンを払っているというケースでよくみられるのが、責任感が希薄になる方です。自分が住んでいる訳でもない住宅のローンを一生懸命に支払うのがバカらしくなり、支払いをストップ。
督促状などは支払いをしている方宛に届くため、住んでいる方の方がその事実を知るのは競売を知らせる通知となります。
競売では一般的な評価額よりも7割ほどの安い価格で売却されてしまい、残った残務はもちろん支払う必要があります。
それに加え、家も出なければならないため、引越し代や新居の費用などの負担が重すぎて破産してしまうケースも。
支払いをしなかった方も、滞納分が払えず自己破産することも少なくありません。大切なマイホームだからこそ頑張って守っていこうという気持ちが大きいですが、一旦離れてしまうと気持ちをつなぎとめるのは難しい傾向があります。
離婚は考慮されない
「離婚をしているのだから、金融機関も配慮してくれるのでは?」と思われるかもしれませんが、一切の配慮はありません。
金融機関では、夫婦ではなく夫・妻それぞれ、1人の人として契約を交わしているという認識であり、夫婦関係が破綻した後も契約が変更されることはありません。
毎月の支払いや名義に至るまでこれまで通りというスタンスです。もちろん、名義変更も保証人についても離婚するから変更というのは認められず、正規の手続きが必要となります。
名義変更
住宅ローンにまつわる名義人といえば「登記名義人」「ローンの名義人」「連帯保証人」の3つが挙げられます。
登記名義人
物件の所有権を持つ者として登記簿に記載されるもので、1人のみの「単独名義」と、夫婦2人共が名義人の「共有名義」が一般的です。
ローン名義人が所有者になるため、ペアローンを組んでいる場合は、必然的に共有名義になっていることでしょう。
離婚による財産分与などで、名義を書き換えるのも珍しくありませんが、住宅ローンを返済しているうちは債権者である金融機関の承認が必要です。基本的には完済しないと許可は下りず、どちらかが税金を滞納して差し押さえや、居住権を主張するといったトラブルもみられます。
ローンの名義人
離婚後にどちらかが住宅に住み続けることは珍しくありません。
その際、ペアローンであれば家を出た方がいつまでローンを払い続けてくれるのか不安という声も聞かれます。また、ローン完済後に自身の権利を主張し、結局売却しなければならないなどのトラブルを引き起こすことも。そのため、どちらか一方に住宅ローンの名義を変更したいと希望する方は多いですが、基本的には住宅ローンの借り換えが必要です。
手数料が発生する点や、収入によっては希望が通らないなど、すんなりいかないケースも少なくありません。
連帯保証人
自身が住宅ローンの名義人ではなくとも、連帯保証人になっているケースは非常に多くみられます。
無職であっても指名できるため、専業主婦の方が連帯保証人となっている場合も多く、まずは確認が必要です。連帯保証人の責任は重く、名義人が住宅ローンを返済できない場合などは代わって返済を求められる立場であり危険です。
ですが、解除には代わりの連帯保証人を立てる、ローンの借換えをするなど険しい道が待っています。
住宅はできるだけ処分を
ペアで住宅ローンを組んでいる、連帯保証人になっているなど事情はそれぞれであり、話し合いをするのも大変という場合もあるでしょう。
ですが、住宅ローンが残ったまま住宅を残しておくなら、よほど信用できる相手でなければ難しいことは明白です。
この点については、生活を共にできない相手だから離婚するのであり、できる限りリスクを減らすことが大切ではありませんか?また、会社の倒産やリストラ、体調不良によって就労が難しくなるなど、誰もがリスクを抱えていることも忘れてはいけません。さらに、現在は協力的でも再婚や出産に伴い気持ちが大きく変化することも稀ではありません。
未来にどう転ぶか分からない時限爆弾を残さないためにも離婚の際は、できる限り住宅を売却する方向で話を進めることをおすすめします。
どうしても残したいというのであれば、どちらかが単独名義で住宅を取得することをおすすめします。
住宅ローンで破産しないためのステップ
離婚時はお互い感情的になりがちで、相手の話に耳を傾けられない傾向があります。お互いが納得し、住宅を手放すことができるよう、工程を確認していきましょう。
ステップ1・まずは現在の価格を知る
まずは現在売却すればどの程度になるのか、おおよその価格を知ることから始めましょう。不動産会社に依頼すればあっという間に査定額が提示されますが、複数の見積もりをとっておくとより明確に知ることができます。
ステップ2・ローン残高の確認
住宅の市場価格が判明したら、住宅ローンの残債を確認し、オーバーローンになっていないかをチェックしましょう。残債は定期的に送付してくるローンの返済予定表に記載されていますので確認すればすぐに判明します。
ステップ3・意思の確認
売却するのか、どちらかが取得するのか、お互いの意思を確認しましょう。
ステップ4・条件を詰める
売却する場合の分配は比較的簡単ですが、どちらかが取得する場合は複雑になりがちなので、専門家に依頼するのもおすすめです。
売却できない場合もある
ローン組んでから日が浅い
「身の丈に合わない住宅を購入し言い争いが絶えなくなった」や、「スピード婚で住宅ローンを組んだけどやっぱり離婚したい」など、ローン開始から日が浅い段階で売却を希望していませんか?
住宅ローンは20年や30年という長期で返済をするための商品であり、あまり早く売却する場合には詐欺の疑いがかけられるケースもあります。
以前流行った住宅ローン詐欺の影響ということですが、少なくとも3年ほどは支払いを続ける必要があるでしょう。
オーバーローン
前述の通り、オーバーローン状態の場合は、売却益で賄えない残債を一括返済できない場合は売却はできません。ですが、金融機関によっては相談に乗ってくれる場合もあるため、まずは相談してみることをおすすめします。
人気がない
立地が悪い、特殊な間取り、築年数が10年を越えているなど、物件の魅力が低い場合はなかなか買い手が付かないこともあります。また、旗竿地や再建築不可物件など特殊な土地であれば、専門に取り扱う不動産業者に依頼しなければ難しく、業者の見極めも必要です。
リスクを軽減するには
離婚をする頃にはお互いに信用することができず、話し合いも進まないといった状態でしょう。
そんな事態に備えて、ローンを組む前に住宅ローンについての決めごとをしておくことも有効です。
欧米には結婚前に生活や財産についての決めごとである「プレナップ」が一般的ですが、これをお手本にするのもアリですね。2人で協議し作成するのもいいですが、弁護士や行政書士などプロに依頼すると更に確実です。
費用はかかりますが、その分気づきにくい細かな部分までサポートしてくれます。また、離婚後もローンを払ってくれるという場合にも、この方法は有効で、さらに強制力のある公正証書を作成する方もみられます。
住宅ローン破産は珍しくない
しっかり働いて真面目に返済をしていれば破産は他人事と考えがちですが、人生は何が起こるか分かりません。破産も、決して珍しいものではなく、誰もが対策を行う必要があります。住宅ローンでトラブルが発生したら、まず金融機関へ相談し、破産となる前に代替案を立てられるよう行動しましょう。
また、住宅ローンを組む前から配偶者とよく話し合い、常に冷静に行動できるようお互いに工夫することをおすすめします。