家に住み続けられて住宅ローンも完済!?離婚協議書で第二の人生をスタート

2019年07月01日(月)

離婚することを前提にしてこれから離婚協議書を書き始める女性の方必見。離婚協議書の基礎知識や住宅ローンの返済についてアドバイスをお送りします。
気になる住宅ローンの話や夫と離婚しても自宅に住み続けるためのポイントも解説します。

■口論の末、離婚を決意……経済的に不安定な妻に住宅ローンが重くのしかかる

Aさんは夫と中学1年生の子どもの3人で暮らしていましたが、夫とは性格が合わず、喧嘩をすることも日常茶飯事。育児の疲れも相まって離婚を決意しました。

Aさんは子どもといっしょに今の家に住み続けたいと考えていましたが、自宅の所有権は夫にあり、住宅ローンも夫が支払っていて、Aさんは夫の連帯保証人となっている状況。
登記変更するにもパートだけでローンの支払を続けていくのも難しいと考えていました。とにかく夫とは1日も早く別れたいけど、どうすれば良いのかわからない。

そんなときに知ったのが離婚協議書の活用でした。

■離婚協議書とは?

離婚の際には慰謝料や子どもの親権や養育費の支払い、不動産の扱い、財産分与など、さまざまな問題が発生します。
「慰謝料はいくら払うのか?」、「どのように養育費を払うのか?」、「財産はどう分割するか?」といったことで揉めることも少なくありません。

こうした問題は話し合いをして決めていくのですが、口約束のみだと後で「言った・言わない」のトラブルが発生する可能性も高いです。

離婚協議書はいわば離婚する夫婦間の契約書のようなもの。
約束の内容を書面に残しておけば、それが証拠となって揉めるリスクも格段に低くなります。

慰謝料や養育費、財産分与、親権、子どもとの面会など、さまざまな内容について離婚協議書に記載することができます。もちろん、今回の主題である住宅ローンの支払いについても離婚協議書に記載することで、相手に約束を守らせることが可能です。

■離婚協議書の活用方法

妻が家に住み続ける場合、本来であれば財産分与などを行って妻に名義変更をするのが一番良いのですが、ローンの契約上名義変更ができないケースがほとんどです。
自宅の所有者が夫の名義になっていて、妻が連帯保証人となっている場合だと、「夫がローンを支払って妻が住み続ける」という旨を離婚協議書に記載する必要があります。

口約束で「ローンは支払い続ける」と言ったにもかかわらず、ローンの支払いを止めてしまう男性も少なくありません。しかし、離婚協議書を公正証書として残しておけば法的効力が発生するので、夫は約束を破ることができなくなります。

住宅ローンに限らず、離婚する際のすべての約束は公正証書によって履行する義務が生じるので、自分に有利になるように離婚協議書の内容を整理しながら作成することが大切です。

■公正証書作成にかかる費用一覧と実例

離婚協議書を作成し、両当事者がその内容に同意した上で公証役場に出向いて(公証役場に出向くのは代理人でも可)、合意した内容をもとに公証人が公正証書を作成するというプロセスを経て離婚協議書が法的効力を持ちます。

公正証書を作成する際には財産分与額に応じて以下のような手数料が必要です。

財産分与額 公正証書作成手数料
100万円以下 5,000円
100万円を超え200万円以下 7,000円
200万円を超え500万円以下 1万1,000円
500万円を超え1,000万円以下 1万7,000円
1,000万円を超え3,000万円以下 2万3,000円
3,000万円を超え5,000万円以下 2万9,000円
5,000万円を超え1億円以下 4万3,000円

一つ注意したいのは、契約行為ごとに公正証書を作成しなければいけないということです。
たとえば、養育費と財産分与に関する公正証書を作成する場合は2件分の手数料がかかります。

上表にもとづいて、実例を用いながら公正証書を作成する際にかかる手数料を計算してみましょう。

(1)10年間毎月3万円の養育費を支払う
(2)財産分与は1,000万円

以上の2つの条件を記した公正証書を作成すると仮定します。

(1)の場合は3万円×12ヶ月(1年)×10で、養育費は合計360万円となり、上表の「200万円を超え500万円以下」に該当しますので、公正証書作成手数料は1万1,000円となります。
ちなみに、養育費など定額の支払いに関しては、最長10年を支払期間として計算します。

(2)の場合は、そのまま上表に照らし合わせると「500万円を超え1,000万円以下」となり、公正証書作成手数料は1万7,000円です。

(1)と(2)で公正証書作成手数料は合計で2万8,000円必要ということになります。
決して安い金額ではありませんが、後に約束を反故されるリスクを考えると、公正証書を作成されることをおすすめすます。

■離婚協議書の記載例

それでは、具体的に離婚協議書にはどのような内容を記載すれば良いのか、具体例を見てみましょう。

離 婚 協 議 書

(離婚の合意)
第1条
夫B(以下、「甲」)と妻A(以下、「乙」)は、協議離婚することに合意し、下記の通り離婚協議書を取り交わした。

(離婚届)
第2条
乙は各自署名捺印した離婚届を令和◯年◯月◯日までに、●●市役所に提出するものとする。

【略】

(財産分与)
第●条
甲は乙に対し、財産分与として金1,000万円を令和年○月○日までに乙の指定する口座へ振込送金の方法により支払う。 2 振込み手数料は甲の負担とする。

【略】

(公正証書)
第●●条
甲及び乙は、本合意につき、強制執行認諾約款付公正証書を作成することを承諾した。

上記のとおり合意したので、本書二通作成し、甲乙各自署名押印の上、各自一通ずつ保有する。

令和○○年○月○日

(甲) 住所
氏名 (印)

(乙) 住所
氏名 (印)

以上が離婚協議書の文例です。
第1条はこの公正証書が誰と誰の間で交わされた契約なのかを示す条文です。
第2条は離婚届について定められています。以下、親権や慰謝料、養育費など必要事項を記載していきます。

途中、財産分与に関する例文を記載しました。
このように、「誰が」「誰に」「何を」「いつまでに」「どのように」行うのかを明記します。

最後に「強制執行認諾約款付公正証書を作成することを承諾した」という文言をつけ、日付と住所を記し、署名、捺印を両者が行うことで、公正証書自体を債務名義として強制執行を行うことが可能となります。

■住宅ローンの返済は冷静な「損得勘定」を

離婚をする際には夫婦で話し合って誰がどのようにローンを返済していくのかを考えましょう。
冷静になって“損得勘定”をすることも大切です。
しかし、どうすれば得なのか、何をすると損をするのかはケースによっても異なります。
そこで、ローンの名義人のケースごとに解決策を見ていきましょう。

1.夫が嫌気をさして家出。妻と子が住み続けるケース

夫が家を出て、妻と子どもが残る場合は、住宅ローンを夫の名義にしたままにして夫が支払い続け、妻と子どもが生活を続けるケースが多いです。
特に未成年の子どもがいる場合は、養育費の代わりにローンを支払い続けるという選択肢もあります。

妻と子どもは変わらず自宅で生活することができますが、途中で夫が住宅ローンの支払を放棄してしまうケースも少なからずありますので、必ず公正証書を作成しましょう
また、連帯保証人になっていると妻が連帯債務を負わなければいけませんが、連帯保証人の解除は容易ではありません。たとえば「連帯保証人である元妻が支払いを肩代わりしたら、債務処理に費やした負担金の全額を元夫に請求できる」というような記載が公正証書にあれば有利になります。

2.ローンの支払いを妻に名義変更。夫と別々で暮らすケース

離婚とともにローンの名義を妻に変更するためには、妻に支払能力があることが求められます。
元夫よりも支払能力が低いとみなされ、銀行や金融機関から名義変更が認められないケースも少なくありません。

どうしても名義変更をしたいのであれば、借り換えなどの手段をとる必要があります。ただし、アルバイトやパートの収入だけではどうしても返済能力が低いとみなされて借り換えができないのが現実です。

自宅の所有権を変更したいのであれば、ローンが完済するまで待つか、公正証書に夫がローンを支払い続けて、完済した時点で妻に変更登記をする旨を記載する必要があります。

3.夫が今の家に住み続けるケース

このケースでは名義人変更などの手続きは必要ありません。
しかし、連帯保証人になっているかどうかは注意しなければいけません。仮に夫の連帯保証人になっていると、債務者である夫がローンを支払えなくなったときに、妻に返済義務が生じます。

前述のとおり、公正証書に支払いの肩代わりについて記載するようにしましょう。

■話し合いの上、住宅ローンと離婚協議に終止符を打とう

離婚後も今のご自宅に住み続けられる可能性はあります。
そのためには、自分が有利になるように離婚協議書を作成することが重要です。加えて、夫が住宅ローンの支払いをできなくなるなどのリスクにも備える必要があります。

今回ご紹介したように、どうすれば有利になるのかは人によって異なります。また、離婚協議書の作成も簡単なことではありません。離婚で少しでも有利になりたいのであれば、まずは専門家に相談してみましょう。

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