離婚の際はマイホームをどうするかでトラブルになりがちです。
特に不動産が共有名義の場合は、意見が真っ二つに割れることも珍しくありません。
今回は夫婦が共同で所有している不動産の売却について実例を交えながら解説。円満解決するためのポイントや不動産の売却にかかる税金についてもご説明します。
■共有名義の夫は売却、離婚したい妻は反対。口論になり迷いに迷って決断
Aさんは夫であるBさんの浮気が原因で離婚をすることに決めました。
AさんとBさんには共有名義のマイホームがあります。
小学6年生の子どもがいて、住まいのにも周辺の環境にも特に不満がないため、Aさんはこのまま自宅に住み続けていきたいと考えてきました。
一方、Bさんは住宅ローンを支払い続けなければいけないので、離婚したら家を売却したいと思っています。
この場合、取れる選択肢としては以下の2通りが挙げられます。
1.夫婦で同意のもと売却する
どちらかがが折れて売却する場合、住宅ローンの有無によって大きく話が違ってきます。
住宅ローンの返済が完了しているのであれば、問題なく家やマンションを売却することが可能です。そして、売却で得た利益を財産分与することもできます。たとえば家が1,000万円で売れた場合、2分の1ずつの500万円を夫婦で分けると円満解決につながるでしょう。
住宅ローンが残っている場合は、「アンダーローン」なのか「オーバーローン」なのかによって売却できるかどうかが決まります。
アンダーローンの場合
アンダーローンとはローンの残債が家の売却額を下回る状態です。家を売却すればローンを完済できるので、この場合は問題なくマイホームを売却することができます。
たとえばローンの残債が500万円で、家の売却額が1,000万円とすると、500万円をローンの返済に充てます。残った500万円が利益となり、これを250万円ずつに分けることが可能です。
オーバーローンの場合
問題なのはローンの残債が家の売却額を上回るオーバーローンの場合。家を売却してもローンを完済するのは不可能です。
たとえば住宅ローンの残債が800万円あって、家の売却額が500万円である場合、足らない300万円を返済しない限り、家を売却することができません。
2.夫婦の一方が住み続ける
次に、家を売却せずにどちらか一方がローンを返済しながら住み続けるケースを考えてみましょう。
アンダーローンの場合は財産分与が可能です。
先ほどの例に当てはめてみましょう。ローンの残債が500万円で、家の売却額が1,000万円で売却すると、500万円の利益が得られます。つまり、マイホームを所有するということは、500万円分の資産を持っていると言えるのです。
この場合、住み続ける人が出ていく人に対して250万円渡すことで財産分与が成立します。
ただし、共有名義となっている場合は、相手の単独名義に書き換える必要があります。
住宅ローンがある場合は、夫が債務者になっていて、妻が連帯保証人になっているケースが多いです。
実は離婚したからといって連帯保証人から外れられるわけではありません。しかも、住宅ローンの支払期間中は銀行などの金融機関から承諾がないと名義変更もできないのです。
住宅ローンの残債がある限り、共有名義や連帯債務者・連帯保証者の解除は非常に困難なのです。
■共有名義の解消で悩みに悩んで下した任意売却という結論
AさんとBさんの話に戻りましょう。
Aさん夫婦はローンの残債が家の売却額を上回るオーバーローンでした。
Aさんはパートで収入も不安定だったので、住み続けたとしてもローンが完済できるめどはありませんでした。売るに売ることもできなかったため、夫婦で話し合った結果、任意売却をすることにしました。
このように、住宅ローンがある場合はどちらか一方が住み続けたいと思っても「返済をどうするか?」が問題になるケースが少なくありません。家を売却して、全ての債権・債務の精算が完了することもあります。
家を売却できるなら売却して残債をのこさない、財産分与をしてしまうというのが、一番早くて後腐れのない、円満解決に結びつく手段だと言えます。
しかし、問題なのはAさんの家のようにオーバーローンだった場合です。
前述のとおり、オーバーローンの状態では原則として家を売却することができません。ただし、以下のような手段をとれば、オーバーローンであっても家を売却することは可能です。
1.家族や知り合いに相談して完済
まずは家族や親戚、知り合いにお金を借りて住宅ローンを返済する方法です。
審査がない身内であれば、住宅ローンの残債があったとしてもお金を借りることができます。
ただし、借金している相手が銀行などの金融機関から身内に変わっただけなので、ローンの残債分を返していかなければいけません。
2.任意売却
通常、住宅ローンの残債がある場合は不動産が担保に入っていて、抵当権(債務が履行できないときに、担保について他の債権者に優先して自己の弁済を受けられる権利)がつけられています。
この抵当権が外れない限り、不動産を売却することはできません。
しかし、ローンが残っている状態の不動産でも任意売却なら売れます。
任意売却とはローンの返済が困難になった場合に、不動産仲介会社などが債権者と交渉して抵当権を解除してもらって不動産を売却する方法です。
住宅ローンが支払えないとなると、抵当権が設定されている自宅が差し押さえの対象となります。やがて、競売にかけられるのですが、多くの場合市場価格よりも大幅に安い価格で売り飛ばされてしまいます。
家を失って多額の借金だけが残ったという悲惨なケースもあるのです。
任意売却なら自宅を市場価格と同等の金額で売却でき、残ったローンの毎月の返済も減額できる可能性が高いのが任意売却のメリットと言えます。
一方で、任意売却を行うとブラックリストに載り、今後銀行や金融機関からの借入が困難になってしまうというデメリットもあります。
メリットとデメリット、どちらを取るかよく考えてください。
■家の売却には税金がかかる!?
家を売却するにしても、住み続けるにしても、税金がかかります。離婚する際には以下のような税金がかかることも頭に入れておきましょう。
1.家を売却する場合にかかる税金とは
家を売却して利益が出れば、譲渡所得税という税金を支払わなければいけません。
譲渡所得は「譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額」という計算式で求めることができます。
ただし、居住用の不動産を売却する場合は3,000万円の特別控除が受けられますので、実際に譲渡所得税が課せられるケースはそれほど多くありません。
2.一方が住み続ける場合にかかる税金とは
一方が住み続けて名義変更をした場合も譲渡にあたります。
取得したときよりも譲渡するときの家の値段が上がっている場合は、譲渡した方に譲渡所得税がかかるのです。しかし、こちらも3,000万円の特別控除を受けられます。
■離婚危機の夫婦だけで解決できないなら専門家へ
離婚は当事者だけでは解決できない問題も数多くあります。
特に、不動産については住宅ローンの有無や残ローンの状況などによって大きく話が変わってきて、今後の人生に影響を及ぼしかねません。手続きなども大変です。
しかし、家を売却するなどして円満に解決する手段もあります。
離婚と住宅ローンの問題は当事者だけではなく、専門家に相談して対処されることをおすすめします。
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