法律はこの世の中を有利に生きるために必須の知識ですが、何分難しく深く知らない方がほとんどです。普段の生活では特に問題がなくても、知らないがために落とし穴にハマってしまうことも考えられます。すべて細かく知ることは難しいですが、人生と切っても切れない不動産関係のポイントは押さえておくほうが安心です。Eさんも知らなかったばっかりに詐欺行為を疑われた1人。今回はEさんの例を見ながら、そのポイントについてお伝えしていきます。
■生前贈与が詐欺といわれ
Eさんは一般的な会社員でしたが、奥さんのE子さんは相続した不動産を賃貸にだすなど自営業をしていました。そのうちの1つであるマンションで暮らしていましたが、婚姻期間が20年を超えたため、夫婦間の生前贈与が2000万円まで非課税になる制度を利用。マンションは生前贈与され、Eさん名義になりました。自分だけの財産ができると嬉しく思っていましたが、その後Eさんが海外へ転勤となったことですれ違いが発生し離婚。財産分与はマンションはEさん名義のまま、預貯金を分けてあっさり終了したはずでした。
その翌年、Eさんの元へ裁判所から一通の書類が届きました。開封したところ、「不動産仮処分命令申立書」が入っており、あのマンションが仮処分登記された旨が書かれています。仮処分登記とは、裁判所で審議している間に、勝手に物件を処分しないようにする処置です。なぜ、そうなるのかと問い合わせたところ、E子さんが株で失敗した損失を借り入れで補っていたのですが、返済が不能になっていることが分かりました。債権回収会社がEさんのマンションは、生前贈与を隠れ蓑にして財産を不当に隠した詐欺と主張し、「詐害行為取消権」を求めて訴えを起こしていることが通知の原因だったのです。すでにEさん名義のマンションですが、生前贈与を提案した時期はすでにE子さんは借り入れだけでなく、時折滞納していたことがネックになっているとのこと。Eさんはまずは帰国し、弁護士を探すことにしました。
■不本意ながら支払いで決着
E子さんの債務は300万円。さらに延滞金が付いて500万円となっています。Eさんはきちんと収入がありますが、E子さんは返済のためにすべての不動産を手放しており、無い袖は振れない状態です。経営にはノータッチであり、生前贈与の頃すでにそんな状態だったとは知らなかったEさん。弁護士の提案で知らなかった旨を記載した弁済書を裁判所に提出しましたが、認められることはありませんでした。
裁判で詐欺行為が認められるとマンションはE子さんに所有権が戻り、競売にかけられてしまうといわれましたが、現在はEさんの妹夫婦が住んでいるため避けたいところ。次に、債権回収会社に和解を提案し、300万円を一括で、残り200万円は分割で支払うことで合意することができました。
決着の後、E子さんと話す機会があり、なぜ失敗した時点で相談してくれなかったのか訪ねたところ、かっこ悪くて言えなかったと告白されました。その頃から不動産の処分を始めていたけれど、このマンションは残したくてEさんに譲ったとのこと。結果、迷惑を掛けることになり申し訳ないと謝罪を受けました。借金がなければ離婚も、もっと違った結果になったのかもしれません。
■借金がある方からの生前贈与は危険
Eさんは事情も知らず、詐欺行為をしているつもりは一切ありません。ですが、裁判所はこれを認めず、和解するしかありませんでした。不動産を贈与される場合は税金の面だけでなく、お相手の事情についてもしっかりと把握しておく必要があるでしょう。
夫婦や親子など、親しい間柄であれば自分たちで手続きを行いがちですが、どんな落とし穴があるか分かりません。できる限り弁護士などの専門家に相談することで、親や配偶者に聞きづらい問題もしっかりと把握することができます。弁護士のつてがないという場合には日弁連のサイトから探すこともできるため、それほど難しことではありません。
また、今回のようにトラブルとなっているけれど費用がないという場合は、お近くの「法テラス」で相談するのもおすすめ。基準を満たしている方なら1つの問題につき、30分程度の相談を3回まで無料で行うことができます。
■専門的な問題はプロの力を
「餅は餅屋」といいますが、すべての範囲を1人で完璧に行うには無理があります。ピンチの時には法律なら弁護士、土地のことなら不動産業者のように使い分け、その道のプロの知恵と力を借りるのが一番の解決法です。いざという時にサッと対応できるよう、日頃からアンテナを張り巡らせておきましょう。
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